はじめに このたび、令和3年度から8年度までを計画期間とする「第4期横浜市障害者プラン」を策定しました。障害のある方もない方も、お互いに人格と個性を尊重し合い、自分らしくいきいきと地域で生活できるよう、中長期的なビジョンを持って、効果的に施策を展開していきます。 多くの尊い命が理不尽に奪われた「津久井やまゆり園」での事件をはじめ、各地でのグループホームの建設反対運動など、依然として、障害のある方の生命や生活が脅かされる出来事が起こっています。障害のある方への理解がいまだ十分ではないことを思い知らされる、この現状を前に、私たちは改めて「障害者の権利に関する条約」の理念を見つめなおしました。このたびのプランには、条約が唱える、障害のある方の人権と尊厳を尊重することの大切さを、基本目標に掲げています。 プランの策定にあたっては、アンケート調査やインタビュー、意見交換会を通じて、障害のある方やご家族、支援者の皆様から、大変貴重なご意見を頂戴しました。熱心にご議論いただきました横浜市障害者施策推進協議会、障害者施策検討部会の委員の皆様をはじめ、当事者・関係団体の皆様、パブリックコメントなどを通じてご意見・ご提案をくださった多くの市民の皆様に厚く御礼申し上げます。 たくさんの方々と議論を重ね、ご一緒に作り上げたこのプランを道しるべに、横浜市の障害者福祉施策に全力で取り組んでいきます。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。 令和3年4月 横浜市長 林 文子 注パブリックコメントとは、市が計画等を策定するに当たって、その素案を広く市民の皆様に公表し、皆様から寄せられたご意見を案に取り入れることができるか検討するとともに、寄せられたご意見に対する市の考え方とその検討結果を公表する手続きのことです。 第1章計画の概要 1計画策定の趣旨 横浜市では、障害施策に関わる中長期的な計画である「障害者プラン」(以下「プラン」という。)を、平成16年度に策定しました。その後、21年度に「第2期プラン」、27年度に「第3期プラン」を策定し、障害者が自己選択・自己決定のできる社会の構築という視点を中心に、施策を推進してきました。 このプランは、次の三つの法定計画(策定するよう法令で決められている計画)の性質を持つ計画です。 一つ目は、「障害者基本法」に基づく、障害者に関する施策の方向性等を定める基本的な計画である「障害者計画」です。二つ目は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」に基づき、障害福祉におけるサービスごとに、必要な利用の見込み量を定め、その円滑な実施の確保を進めていくことを定める「障害福祉計画」です。三つ目は、「児童福祉法」に基づく、障害児福祉におけるサービスごとに、必要な利用の見込み量を定め、その円滑な実施の確保を進めていくことを定める「障害児福祉計画」です。 第4期プランも、引き続き、横浜市の施策と、国が定める障害福祉サービスの連携を図っていく必要があることから、この三つの計画を一体的に策定します。 障害のあるなしにかかわらず、全ての市民が、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されることを前提に、障害のあるなしによって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら暮らすことのできるまちを実現していくことが必要です。 そのため、第4期プランでは、「障害のある人もない人も、誰もが人格と個性を尊重し合いながら、地域共生社会の一員として、自らの意思により自分らしく生きることができるまちヨコハマを目指す」を基本目標として掲げました。また、基本目標の実現に向け必要な7つの視点を設定し、本市における障害福祉施策をしっかりと進めていきます。 2計画の位置付け (1)計画期間 第3期プランは、平成27年度(2015年度)から令和2年度(2020年度)までの6年間を計画期間として策定しました。 また、中間期である平成29年度末(2017年度末)には、「障害福祉計画」部分について、3年を1期として作成することとしている「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」(国が障害福祉計画及び障害児福祉計画の策定に関して定めたもの)に基づく見直しのほか、児童福祉法の改正に伴う「障害児福祉計画」の一体的策定を行うとともに、プラン全体の振り返りと後期3年間の方向性をまとめた改訂版を策定しました。 第4期プランについても、第3期プランと同じく、中長期的なビジョンを持って施策を進めていくために、計画期間を6年間として策定します。 また、障害福祉計画及び障害児福祉計画の部分については、3年後に見直しを実施します。そのほかにも、第4期プランの進行管理や進捗を評価し、その施策・事業の必要性の検討、事業規模や期間などを見直すとともに、社会情勢やニーズの変化に伴う新しい課題に柔軟に対応するための施策の再構築なども併せて実施します。 ここに第4期障害者プランの見直し時期についての表があります。表は3行です。 1行目には第4期横浜市障害者プランは計画年度が書かれていて、令和3年度(2021年度)、令和4年度(2022年度)令和5年度(2023年度)、令和6年度(2024年度)令和7年度(2025年度)、令和8年度(2026年度)と記載されています。 2行目には名称が書かれていて、第4期障害者プランと記載されています。 3行目には構成が書かれていて、障害者計画と書かれています。障害者計画の中には障害福祉計画と障害児福祉計画が含まれています。 障害者計画は計画年度は令和3年度から令和8年度までで、6年度ごとの見直しです。 障害福祉計画及び障害児福祉計画は3年度ごとの見直しで、表の令和5年度末(2023年度)末と令和8年度末(2026年度末)に見直しという吹き出しが出ています。 注障害者計画は施策の方向性及び個別の事業等を定める計画です。 注障害福祉計画は障害福祉サービス利用の見込み量等を定める計画です。 注障害児福祉計画は障害児福祉サービス利用の見込み量等を定める計画です。 表はこれで終わりです。 (2)他の計画との関係性 横浜市では、個別の法律を根拠とする福祉保健等の分野別計画として、「よこはま地域包括ケア計画(横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画・認知症施策推進計画)」、「健康横浜21」、「横浜市子ども・子育て支援事業計画」、「横浜市住生活基本計画」、「横浜市教育振興基本計画」があります。これに加えて、「よこはま保健医療プラン」という横浜市独自の保健医療施策に関する総合的な計画があります。 また、「横浜市地域福祉保健計画」は、地域の視点から高齢者、障害者、子ども・若者等の対象者や、保健や健康に関する分野別計画に共通する理念、方針及び取組推進の方向性等を明示し、対象者全体の地域生活の充実を図ることを目指しています。また、住民、事業者及び公的機関が協働する基本的な事項を横断的に示すことで、地域における展開を総括する役割を果たします。分野別計画に掲げた事業や地域活動支援は、地域福祉保健計画と相互に連携して取組を進めることで対象者の地域生活の充実を図っていきます。 このように、障害のあるなしにかかわらず、地域での生活を支援するためには、人々の暮らしの場である地域において、様々な取組をそれぞれの関係性や相互のつながり、取組全体の方向性、連続性といった視点でとらえ、それぞれを関連付けて行うことが必要です。 施策の展開に当たっては、関係するそれぞれの分野別計画が、有機的に連動していくことによって、一層の効果が上がってきます。 行政分野ごとの専門性を充実させ、質の高い施策を展開していくとともに、関連する分野を意識し、整合性を図りながら一体的に推進していきます。 2列の表があります。1列目は行政計画の名称です。2列目は根拠法です。 注行政計画の名称の前に星マークがあるものは第4期プランから新たに取り上げた計画です。 名称横浜市地域福祉保健計画 根拠法社会福祉法 名称よこはま地域包括ケア計画(横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画・認知症施策推進計画) 根拠法老人福祉法、介護保険法 名称健康横浜21 根拠法健康増進法 名称星マーク横浜市歯科口腔保健令和3年度から令和4年度の取組〜第3期健康横浜21における横浜市歯科口腔保健推進計画の策定に向けて〜 根拠法横浜市歯科口腔保健の推進に関する条例 名称横浜市子ども・子育て支援事業計画、 根拠法子ども・子育て支援法、次世代育成支援対策推進法 名称星マーク横浜市住生活基本計画 根拠法住生活基本法 名称星マーク横浜市教育振興基本計画 根拠法教育基本法 名称星マーク横浜市依存症対策地域支援計画(仮称)注令和3年度策定予定 根拠法依存症対策総合支援事業実施要綱(国要綱) 名称よこはま保健医療プラン 根拠法なし ここで表は終わりです。 本プランでは、各所にトピックやコラムを掲載しています。 トピック:プランの内容を別の切り口から要約)・抜粋したものなど、内容に密接な説明文。 コラム:プラン記載の各事業の事例紹介や、内容を深めるための囲み記事。 コラム エスディージーズを踏まえた計画の推進 2015(平成27)年9月、国連サミットで採択された国際的な目標が、エスディージーズ(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))と呼ばれるものです。2030年(令和12年)をゴールとして、持続可能な社会をつくるための17個の目標が設けられています。 ここに画像があります。 エスディージーズのロゴと17個の目標のアイコンの画像です。 17個の目標 1貧困をなくそう 2飢餓をゼロに 3すべての人に健康と福祉を 4質の高い教育をみんなに 5ジェンダー平等を実現しよう 6安全な水とトイレを世界中に 7エネルギーをみんなにそしてクリーンに 8働きがいも経済成長も 9産業と技術革新の基盤をつくろう 10人や国の不平等をなくそう 11住み続けられるまちづくりを 12つくる責任つかう責任 13気候変動に具体的な対策を 14海の豊かさを守ろう 15陸の豊かさも守ろう 16平和と公正をすべての人に 17パートナーシップで目標を達成しよう これらのアイコンの最後にエスディージーズのロゴである17色の円が載っています。 画像の説明は終了です。 横浜市は、平成30年に策定した「横浜市中期4か年計画(2018から2021まで)」で、エスディージーズを意識してあらゆる施策に取り組むこととしています。 また、エスディージーズの特徴のひとつである「誰一人として取り残さない」という理念は、「障害のある人もない人も、誰もが人格と個性を尊重し合う地域共生社会を目指す」という第4期プランの基本目標にも当てはまります。そのため、第4期プランについても、エスディージーズを意識して推進していきます。 エスディージーズ未来都市・横浜の取組事例について ヨコハマ・ウッドストロープロジェクト 横浜市は、平成30年に国から「エスディージーズ未来都市」に選ばれました。様々な取組から一つ、障害のある人たちが製作する横浜産の木のストロー『エスディージーズストロー・ヨコハマ』の取組を紹介します。 ヨコハマ・ウッドストロープロジェクト 横浜市が保有する水源林の間伐材を原材料とし、市内の障害者地域作業所や市内企業の特例子会社等で障害のある人たちが木のストロー『エスディージーズストロー・ヨコハマ』を製作しています。 横浜市は、市内の飲食店・ホテル等への利用促進を図るとともに、市外への普及・展開も促進しています。 海洋プラスチックごみ問題をきっかけに、障害者の活躍の場を創出し、脱炭素社会の実現、森林環境の保全にも寄与する新たなビジネスモデルを創出しています。 ここに画像があります。 エスディージーズの目標のアイコンと写真2枚です。 アイコンはヨコハマ・ウッドストロープロジェクトに該当する目標のアイコンが載っています。 該当する目標 4質の高い教育をみんなに 6安全な水とトイレを世界中に 8働きがいも経済成長も 9産業と技術革新の基盤をつくろう 10人や国の不平等をなくそう 11住み続けられるまちづくりを 12つくる責任つかう責任 13気候変動に具体的な対策を 14海の豊かさを守ろう 15陸の豊かさも守ろう 17パートナーシップで目標を達成しよう アイコンの説明は以上です。 写真の1枚目は、市内の障害者地域作業所で6人の人がウッドストローを作っている様子です。 写真2枚目は、ウッドストローがささった飲み物入りのグラスです。 写真の説明は以上です。 このプロジェクトは、ストローという身近なものを通して、一人ひとりがエスディージーズを実感・体感し、具体的な行動につなげていくというプロモーション効果も期待しています。海洋プラスチックごみ問題や、水源林の保全、温暖化対策という社会問題について広く普及啓発を行うことが、障害のある人の雇用促進や障害者雇用についての普及啓発にもつながっています。そのため、障害福祉施策だけでは情報を届けにくい層に対する普及啓発などの新たな切り口から、障害福祉の推進が図られています。 3計画の構成 第3期プランに引き続き、施策分野別や障害の種別にまとめた行政や支援者の立場に立った視点を基にした構成ではなく、障害のある人が日常生活を送る上での視点に立った枠組みを設定しました。 第4期プランでは、日常生活の場面を4つに分けて考えました。また、「普及啓発や権利擁護、人材確保など特定の生活場面に限定できないものが大切だ」という意見を受け、「様々な生活の場面を支えるもの」を1つにまとめました。 こうして、計5つの分野に障害福祉に関する施策・事業を分類しました。 2列の表があります。1列目は分類です。2列目は内容です。 分類様々な生活の場面を支えるもの、 内容普及啓発、人材確保・育成、権利擁護、相談支援 分類生活の場面1住む・暮らす 内容住まい、暮らし、移動支援、まちづくり 分類生活の場面2安全・安心、 内容健康・医療、防災・減災 分類生活の場面3育む・学ぶ、 内容療育、教育 分類生活の場面4働く・楽しむ、 内容就労、日中活動、スポーツ・文化芸術 ここで表は終わりです。 また、様々な施策・事業をつなぎ合わせ、障害のある人を地域で支えるための基盤を整備する取組として進めている「地域生活支援拠点機能」と「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」については、別にまとめ、将来像とそれに向けた取組を総合的に記載しました。 4国の動向 (1)地域共生社会の実現に向けて 障害福祉施策に関わる大きな流れとしては、平成19年9月に署名をした「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」への対応があります。22年には、「相互に個性の差異と多様性を尊重し、人格を認め合う共生社会の実現」を掲げることや、その考えを基にした「障害者制度改革の基本的方向と今後の進め方」や「横断的課題における改革の基本的方向と今後の進め方」が閣議決定されました。 そして、障害者権利条約の趣旨に沿った施策の推進を図るため、「障害者基本法」が差別の禁止や防災及び防犯などを盛り込んだ改正となり、23年8月に施行されました。 また、24年6月に、虐待を発見した人の通報を義務付け、自治体などが調査・保護を行う仕組みの構築など、障害者に対する支援のための措置を盛り込んだ「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待防止法)」が成立しました。そして、25年6月には、障害者への差別的取扱いの禁止について、自治体・民間事業者ともに法的義務を設け、合理的配慮の不提供の禁止を、自治体には法的義務、民間事業者には努力義務として盛り込んだ「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が制定されました。 さらに、差別を解消するための具体的な対応として、政府全体の方針である差別の解消の推進に関する基本方針が閣議決定されたほか、国や地方公共団体等では、各機関における取組に関する対応要領(ガイドライン)が策定されました。このように、近年は「障害者基本法」のほかにも多くの法整備が行われました。 こうした法整備を受け、26年1月には障害者権利条約を批准し、障害者の権利の実現に向けた取組を一層強化するための歩みを始めました。 (2)近年の動向 2列の表があります。1列目は年月です。2列目はその時期の出来事です。 年月平成28年4月 出来事「障害者差別解消法」施行、障害者差別の禁止、合理的配慮の提供義務など 年月平成28年4月 出来事「障害者の雇用の促進等に関する法律」(改正障害者雇用促進法)一部施行、雇用分野における障害者差別の禁止、合理的配慮の提供義務など 年月平成28年5月 出来事「障害者総合支援法」及び「児童福祉法」改正、自立生活援助や就労定着支援の創設、医療的ケア児支援の規定、障害児福祉計画の策定義務など注平成30年4月施行 年月平成28年8月 改正、出来事「発達障害者支援法」施行、社会的障壁の除去、切れ目のない支援などの理念への追加など 年月平成29年4月 出来事「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」(改正住宅セーフティネット法)制定、セーフティネット住宅の登録制度、入居支援など注平成29年10月施行 年月平成30年5月 出来事「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」改正(改正バリアフリー法)、社会的障壁除去等の理念の明記など 注平成30年11月施行 年月平成30年5月 出来事「学校教育法」及び「著作権法」改正、デジタル教科書の併用制など 年月平成30年6月 「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」(障害者文化芸術推進法)制定、施行、計画策定の努力義務など 年月令和元年6月 出来事「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)制定、施行、 計画策定の努力義務など 年月令和2年6月 出来事「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」(聴覚障害者等電話利用円滑化法)制定、電話リレーサービスの制度化など ここで表は終わりです。